原子番号 1 · 非金属
水素 H
別名: Hydrogen
水素は最も軽い元素であり、宇宙でも群を抜いて多い元素です。通常の物質の質量のおよそ4分の3を占めています。陽子1個と電子1個だけからなる、存在しうる最も単純な原子でありながら、恒星を輝かせ、酸素と結びついて水をつくり、有機化学の骨格を形づくっています。
主な性質
| 原子番号 | 1 |
|---|---|
| 原子量 | 1.0080 (CIAAW 2024 簡略標準原子量) |
| 分類 | 非金属 |
| 族 | 1 |
| 周期 | 1 |
| ブロック | s |
| 状態(25 °C・1 atm) | 気体 |
| 融点 | 13.81 K (-259.3 °C) |
| 沸点 | 20.28 K (-252.9 °C) |
| 密度 | 0.0000899 g/cm³ |
| 電気陰性度(ポーリング) | 2.2 |
| 原子半径(ファンデルワールス) | 120 pm |
| 第一イオン化エネルギー | 13.598 eV |
| 電子親和力 | 0.754 eV |
| 酸化数 | +1, -1 |
| 発見 | 1766 |
電子配置
- 簡略表記
- 1s1
- 完全表記
- 1s1
- 電子殻ごとの電子数
- 1
軌道図(ボックス図)
周期表での位置
発見の歴史
燃える気体の存在は、その正体が理解されるずっと前から知られていました。1671年、ロバート・ボイルは、鉄くずを薄い酸に入れるとよく燃える気体が出ることを報告しましたが、それを独立した物質としては扱いませんでした。
決定的な一歩は 1766年 に訪れます。イギリスの科学者ヘンリー・キャヴェンディッシュが金属と酸からこの気体を丁寧に調製し、その軽さを測定して、「可燃性空気」と呼ぶ独自の種類の空気として記述したのです。1781年ごろには、これを燃やすと水ができることを示しました。この結果は、水を元素とみなす古い考え方を覆す一助となりました。
アントワーヌ・ラヴォアジエは水の実験を追試し、1783年にこの気体に現在の名前を与えました。同じ年、ジャック・シャルルがパリで初めて水素気球を飛ばしています。1931年にはハロルド・ユーリーが重い水素、すなわち重水素を検出し、この業績で1934年のノーベル化学賞を受賞しました。
名前の由来
英語名 hydrogen はギリシャ語の hydro(水)と genes(生み出す)に由来し、文字どおり「水を生むもの」を意味します。燃えると水ができるというキャヴェンディッシュとラヴォアジエの発見にちなんだ名前です。元素記号 H は名前の頭文字です。日本語の「水素」は、江戸時代の蘭学者・宇田川榕菴がオランダ語 waterstof(水の素)を訳してつくった言葉です。
主な用途
- アンモニアの製造: 水素と窒素を結合させて肥料をつくるハーバー・ボッシュ法が、単独では最大の用途です。
- 石油精製: 水素は燃料から硫黄を取り除き、重質油を軽い製品へと分解します。
- 化学品と食品: メタノールの原料となるほか、植物油を硬化させるのにも使われます。
- エネルギー: 燃料電池は水素と酸素から電気を取り出し、排出するのは水だけです。液体水素は古くからロケット推進剤としても使われてきました。
- 工業: 大型発電機の冷却材や、金属加工での還元雰囲気として利用されます。
現在の水素の大半は天然ガスからつくられています。再生可能エネルギーの電力で水を分解してつくる、いわゆるグリーン水素の生産は、エネルギー転換の大きな目標のひとつです。
同位体
水素は、同位体にそれぞれ固有の名前がついている唯一の元素です。ふつうの水素である 軽水素(プロチウム、1H)は中性子をもたず、天然の水素の99.98%以上を占めます。重水素(ジュウテリウム、2H または D)は中性子を1個もち、これも安定です。水素原子のおよそ6,400個に1個が重水素です。重水(D2O)は一部の原子炉で中性子の減速材として使われ、重水素化溶媒は NMR 分光法の標準的な溶媒になっています。
三重水素(トリチウム、3H)は放射性で、半減期は約 12.3年 です。電源のいらない非常口表示や時計の文字盤を光らせ、地下水の年代測定のトレーサーとして使われ、重水素とともに核融合炉の燃料として計画されています。
身近なところで
水分子にはどれも2個の水素原子が含まれており、人体の質量のおよそ10分の1は水素です。水素は脂肪、糖、タンパク質、DNA に含まれ、DNA の2本の鎖をつなぎとめているのは水素結合です。
気体の水素は無色・無臭で、空気よりはるかに軽い物質です。空気中ではおよそ4〜75%という非常に広い濃度範囲で燃え、その炎は昼間にはほとんど見えないため、漏れには細心の注意が必要です。1937年のヒンデンブルク号の事故は、水素を詰めた旅客飛行船の時代に終止符を打ちました。
豆知識
- 液体水素の沸点は約20 K(−253 °C)で、ヘリウムを除くどの液体よりも低温です。
- 太陽は毎秒数億トンもの水素をヘリウムに変えています。
- 木星内部の途方もない圧力のもとでは、水素は液体の金属のようにふるまうと考えられています。
同じ族 (1)
データの出典 · 性質: PubChem Periodic Table(米国 NIH/NLM 公開データ)・原子量: CIAAW 2024 簡略標準原子量・名称: Wikidata(CC0)、韓国語名は大韓化学会の表記に準拠。2026-09-23 取得。