原子番号 51 · 半金属
アンチモン Sb
別名: Antimony
アンチモンは光沢のある銀色の、しかしもろい半金属です。古代エジプト人はその硫化物の鉱物をアイメイクに使っていました。今日の主な役割は、プラスチックや繊維の難燃剤の効果を高める助剤と、鉛蓄電池の硬化剤です。
主な性質
| 原子番号 | 51 |
|---|---|
| 原子量 | 121.76 (CIAAW 2024 簡略標準原子量) |
| 分類 | 半金属 |
| 族 | 15 |
| 周期 | 5 |
| ブロック | p |
| 状態(25 °C・1 atm) | 固体 |
| 融点 | 903.78 K (630.6 °C) |
| 沸点 | 1860 K (1586.8 °C) |
| 密度 | 6.685 g/cm³ |
| 電気陰性度(ポーリング) | 2.05 |
| 原子半径(ファンデルワールス) | 206 pm |
| 第一イオン化エネルギー | 8.64 eV |
| 電子親和力 | 1.07 eV |
| 酸化数 | +5, +3, -3 |
| 発見 | 古代 |
電子配置
- 簡略表記
- [Kr]5s2 4d10 5p3
- 完全表記
- 1s2 2s2 2p6 3s2 3p6 3d10 4s2 4p6 4d10 5s2 5p3
- 電子殻ごとの電子数
- 2 · 8 · 18 · 18 · 5
軌道図(ボックス図)
周期表での位置
発見の歴史
輝安鉱(硫化アンチモン)は古代から知られていました。古代エジプト人はこれを黒い粉にすりつぶし、目元を黒く彩るコール(アイライナー)として使いました。
アンチモンそのものも早くからつくられていた可能性がありますが、長いあいだ鉛と混同されていました。1540年、イタリアの冶金学者ヴァノッチョ・ビリングッチョは著書『ピロテクニア』でアンチモンの取り出し方を記述し、17世紀にはフランスのニコラ・レムリらの化学者がその化合物を体系的に研究しました。
中世から近世のヨーロッパでは、アンチモン化合物は吐剤として広く使われていました。アンチモン製の杯にワインを入れておくと、それを飲んだ人は嘔吐しました。杯は1回使うごとにほとんど減らないため、こうした「永久丸薬」や杯は何世代にもわたって使い回されました。
名前の由来
名前は中世ラテン語の antimonium に由来しますが、その起源ははっきりしていません。「修道士に抗するもの(anti-monachos)」という意味だとする俗説が有名ですが、根拠はありません。元素記号 Sb は、輝安鉱のラテン語名 stibium から来ています。
主な用途
- 難燃剤: 三酸化アンチモンは、ケーブルの被覆、電子機器の筐体、繊維に使われるハロゲン系難燃剤の効果を大きく高めます。これが最大の用途です。
- 鉛蓄電池: アンチモンは電池の格子用の鉛を硬くします。
- 活字合金: 鉛・スズ・アンチモン合金は固まるときにわずかに膨張して鋳型のすみずみまで満たし、くっきりした活字をつくります。
- プラスチックの触媒: PET樹脂の製造で触媒として働きます。
- 半導体と医療: アンチモンはシリコンのn型ドーパントであり、アンチモン化インジウムは赤外線検出器に使われます。一部のアンチモン化合物は寄生虫病のリーシュマニア症を治療します。
同位体
天然のアンチモンは2つの安定同位体、アンチモン121(約57%)とアンチモン123(約43%)からなります。放射性のアンチモン124(半減期約60日)とアンチモン125(約2.8年)は原子炉の中ででき、放射線モニタリングで追跡されています。
身近なところで
アンチモンの最大の生産国は中国で、ロシアやタジキスタンなどが続きます。供給が少数の国に集中しているため、多くの政府がこれを重要鉱物に指定しています。
アンチモンとその化合物はヒ素に似て有毒です。大量に飲み込むと嘔吐や下痢を起こし、粉じんを長期間吸い込むと肺や皮膚を傷めることがあります。PETボトルから微量のアンチモンが溶け出すことを示した研究もありますが、ふつうの条件ではその量は飲料水の基準値をはるかに下回ると報告されています。それでも、PETボトルを高温の場所に長く置かないのが賢明です。
豆知識
- 輝安鉱は古代エジプトのコールの原料の一つでした。
- 水と同じく、アンチモンは固まるときにわずかに膨張します。
- アンチモンの杯は、何世紀にもわたって繰り返し使える吐剤として使われました。
同じ族 (15)
データの出典 · 性質: PubChem Periodic Table(米国 NIH/NLM 公開データ)・原子量: CIAAW 2024 簡略標準原子量・名称: Wikidata(CC0)、韓国語名は大韓化学会の表記に準拠。2026-09-23 取得。