原子番号 35 · ハロゲン
臭素 Br
別名: Bromine
臭素は、室温で液体である唯一の非金属元素です。密度の高い赤褐色の液体からは、刺すような息苦しいにおいのする同じ色の蒸気が絶えず立ちのぼります。難燃剤、水処理、化学合成に使われ、臭化物を多く含むかん水から取り出されます。
主な性質
| 原子番号 | 35 |
|---|---|
| 原子量 | 79.904 (CIAAW 2024 簡略標準原子量) |
| 分類 | ハロゲン |
| 族 | 17 |
| 周期 | 4 |
| ブロック | p |
| 状態(25 °C・1 atm) | 液体 |
| 融点 | 265.95 K (-7.2 °C) |
| 沸点 | 331.95 K (58.8 °C) |
| 密度 | 3.11 g/cm³ |
| 電気陰性度(ポーリング) | 2.96 |
| 原子半径(ファンデルワールス) | 183 pm |
| 第一イオン化エネルギー | 11.814 eV |
| 電子親和力 | 3.365 eV |
| 酸化数 | +5, +1, -1 |
| 発見 | 1826 |
電子配置
- 簡略表記
- [Ar]4s2 3d10 4p5
- 完全表記
- 1s2 2s2 2p6 3s2 3p6 3d10 4s2 4p5
- 電子殻ごとの電子数
- 2 · 8 · 18 · 7
軌道図(ボックス図)
周期表での位置
発見の歴史
臭素はほぼ同時に2度発見されました。1826年、モンペリエの若い薬剤師アントワーヌ=ジェローム・バラールは、塩田のにがりに塩素を通して赤褐色の液体を得て、新元素として報告しました。
ドイツでは、カール・レーヴィヒが1825年ごろ、故郷バート・クロイツナッハ近くの鉱泉水から同じ物質を単離していましたが、レーヴィヒが発表する前にバラールの論文が出ました。そのため、発見者は通常バラールとされています。
19世紀半ばには臭化カリウムが鎮静剤として広く使われ、最初の有効な抗てんかん薬の一つにもなりました。20世紀には有鉛ガソリンの添加剤や燻蒸剤の臭化メチルのために臭素の使用量が大きく伸びましたが、のちに環境への懸念から多くの用途が縮小されました。
名前の由来
名前はギリシャ語で「悪臭」を意味する bromos に由来し、そのにおいをよく表しています。元素記号は Br です。日本語の「臭素」も、この語源どおり「臭い元素」という意味の訳語です。
主な用途
- 難燃剤: 臭素化合物は炎の連鎖反応を断ち切るため、電子機器の筐体、断熱フォーム、繊維に加えられます。ただし、分解されにくい一部の種類は現在国際的に規制されています。
- 掘削と水処理: 密度の高い臭化カルシウムや臭化亜鉛の溶液は透明な掘削流体として使われ、臭素系消毒剤はプールやジャグジーの水を処理します。
- 化学品と医薬品: 臭素は医薬品や農薬をつくるための用途の広い中間体です。
- 写真: 臭化銀は写真フィルムの感光材料でした。
同位体
臭素にはほぼ同量の2つの安定同位体、臭素79(約50.7%)と臭素81(約49.3%)があります。そのため、臭素原子を1個含む分子の質量スペクトルには、質量が2違うほぼ同じ高さの2本のピークが現れ、化学者はひと目でそれとわかります。放射性の臭素82は半減期が約35時間で、水文学の研究でトレーサーとして使われます。
身近なところで
商業用の臭素は主に、死海の水やアーカンソー州の地下かん水など、臭化物を多く含むかん水から得られます。海水には1リットルあたり約65ミリグラムが含まれています。
液体の臭素は皮膚にひどいやけどを起こし、その蒸気は目や肺を強く刺激するため、保護具をつけてドラフトの中で扱います。かつて土壌や穀物の燻蒸剤として広く使われた臭化メチルはオゾン層を破壊するため、モントリオール議定書のもとでほぼ全廃されました。
巻貝から得られた古代の貴重な染料、貝紫(ティリアンパープル)も、それ自体が臭素化合物です。
豆知識
- 室温で液体の元素は、臭素と水銀の2つだけです。
- 臭素は約−7 °Cで融け、約59 °Cで沸騰します。
- ローマ皇帝の色だった貝紫の正体は、6,6′-ジブロモインジゴです。
同じ族 (17)
データの出典 · 性質: PubChem Periodic Table(米国 NIH/NLM 公開データ)・原子量: CIAAW 2024 簡略標準原子量・名称: Wikidata(CC0)、韓国語名は大韓化学会の表記に準拠。2026-09-23 取得。