解説 · 09
モル質量の計算方法:化学式からg/molと質量パーセントを求める
モルとアボガドロ定数の定義から、化学式中の原子の数え方、かっこや水和物(CuSO₄·5H₂O)の扱い、質量パーセント、質量とモルの換算まで、CIAAW 2024の原子量を使った例題でモル質量の計算を段階的に学びます。
実験で「グルコースを0.5 mol用意しなさい」と言われたら、てんびんに何グラムのせればよいでしょうか。原子や分子は小さすぎて1つずつ数えることはできないので、化学者はモルという数の単位と、モル質量という換算係数を使います。このガイドでは、モル質量の求め方を基礎から説明し、実際の数値でいくつも計算してみます。
モルとアボガドロ定数
モル(mol)は物質量を表す国際単位系(SI)の基本単位です。1ダースが12個を意味するように、1モルは決まった数の粒子の集まりを意味します。その数がアボガドロ数です。
1 mol = 6.02214076 × 10²³ 個
2019年5月の国際単位系の改定により、この値は測定値ではなく定義値になりました。アボガドロ定数N_Aはちょうど6.02214076 × 10²³ mol⁻¹で、不確かさはありません。2019年以前は「炭素12の12 gに含まれる原子の数」として定義されていましたが、現在は個数そのもので定義されています。実用上、2つの定義はほぼ同じ結果になります。
この数がこれほど大きいのは、原子がそれだけ小さいからです。大さじ1杯強にあたる水18 gには、約6 × 10²³個の水分子が含まれています。
モル質量とは
モル質量(M)は物質1モルの質量で、単位はg/molです。元素の場合、モル質量の数値は周期表の原子量と同じです。原子量は単位のない相対値で、それにg/molをつけたものがモル質量です。
- 炭素:原子量12.011 → モル質量12.011 g/mol
- 酸素:原子量15.999 → 酸素原子のモル質量15.999 g/mol
化合物の場合は、化学式に含まれるすべての原子の原子量を足し合わせます。ここでの計算は、このサイトでも使っているCIAAW 2024の標準原子量(要約表)に従います。
| 元素 | 原子量 | 元素 | 原子量 |
|---|---|---|---|
| H | 1.008 | Na | 22.990 |
| C | 12.011 | Al | 26.982 |
| N | 14.007 | S | 32.06 |
| O | 15.999 | Cl | 35.45 |
| Ca | 40.078 | Cu | 63.546 |
教科書によってはH = 1、C = 12、O = 16のような丸めた値を使うこともあり、その場合は小数点以下の答えが少し変わります。どの値を使うのか、最初に確認する習慣をつけましょう。
ステップ1:化学式の原子を数える
モル質量の問題で最も間違いが起きやすいのは、原子の数え方です。次の4つのルールでほぼすべてに対応できます。
- 下付きの数字は、その直前の元素だけにかかります。H₂OはHが2個、Oが1個です。
- かっこの後の下付き数字は、かっこの中すべてにかかります。Ca(OH)₂はCaが1個、Oが2個、Hが2個です。
- 中点(·)の後の係数は、その後ろの単位全体にかかります。CuSO₄·5H₂Oの5H₂OはHが10個、Oが5個です。
- 同じ元素が複数の場所に出てくる場合は、すべて合計します。NH₄NO₃はNが2個、Hが4個、Oが3個です。
ステップ2:元素ごとの質量を足す
数がわかったら、元素ごとに「原子量 × 個数」を求めて合計します。まずは簡単な例から。
水(H₂O)
- H:1.008 × 2 = 2.016
- O:15.999 × 1 = 15.999
- 合計:18.015 g/mol
二酸化炭素(CO₂)
- C:12.011 × 1 = 12.011
- O:15.999 × 2 = 31.998
- 合計:44.009 g/mol
例題1:グルコース(C₆H₁₂O₆)
| 元素 | 個数 | 原子量 | 小計 |
|---|---|---|---|
| C | 6 | 12.011 | 72.066 |
| H | 12 | 1.008 | 12.096 |
| O | 6 | 15.999 | 95.994 |
| 合計 | 180.156 g/mol |
グルコース0.500 molの質量は、0.500 mol × 180.156 g/mol = 90.078 g、つまり約90.1 gです。これが最初の問いの答えです。
例題2:かっこを含む化学式、硫酸アルミニウム(Al₂(SO₄)₃)
かっこの外の3は、硫酸イオン全体にかかります。Sは1 × 3 = 3個、Oは4 × 3 = 12個です。
- Al:26.982 × 2 = 53.964
- S:32.06 × 3 = 96.18
- O:15.999 × 12 = 191.988
- 合計:342.132 g/mol
かっこを無視してOを4個と数えると、まったく違う答えになります。かっこがある場合は、まず全原子の個数を書き出しておくのが安全です。
同じように、水酸化カルシウムCa(OH)₂は40.078 + (15.999 + 1.008) × 2 = 74.092 g/molです。
例題3:水和物、硫酸銅(II)五水和物(CuSO₄·5H₂O)
青い結晶の硫酸銅は、結晶の中に水分子を含んでいます。この結晶水は中点の後に書き、モル質量にも必ず含めます。
2つの部分に分けて計算すると簡単です。
- CuSO₄:63.546 + 32.06 + 15.999 × 4 = 159.602
- 5H₂O:18.015 × 5 = 90.075
- 合計:249.677 g/mol
原子をまとめて数えても結果は同じです。Cuが1個、Sが1個、Oが9個(4 + 5)、Hが10個なので、63.546 + 32.06 + 15.999 × 9 + 1.008 × 10 = 249.677 g/molになります。
結晶を加熱すると結晶水が抜けて、白色の無水硫酸銅になります。結晶に占める水の質量の割合は90.075 ÷ 249.677 × 100 ≈ 36.08%なので、10.0 gの結晶を十分に加熱すると、質量は約3.6 g減ることになります。
質量パーセント
質量パーセントは、化合物全体の質量のうち、ある元素が占める割合です。
質量パーセント(%)=(原子量 × 原子の数)÷ 化合物のモル質量 × 100
例題4:硝酸アンモニウム(NH₄NO₃)の窒素含有率
- モル質量:14.007 × 2 + 1.008 × 4 + 15.999 × 3 = 80.043 g/mol
- 窒素の質量:14.007 × 2 = 28.014
- 窒素の割合:28.014 ÷ 80.043 × 100 ≈ 35.00%
肥料の袋に書かれた窒素の含有率は、このような計算から出てきます。同じ方法で求めると、グルコースに占める炭素の割合は72.066 ÷ 180.156 × 100 ≈ 40.00%、硫酸銅五水和物に占める銅の割合は63.546 ÷ 249.677 × 100 ≈ 25.45%です。
化合物のすべての元素の割合を足すと100%になるはずで、計算を確かめるよい方法になります。
質量・モル・粒子数の換算
モル質量がわかれば、3つの量を自由に行き来できます。
- 物質量 n = 質量 m ÷ モル質量 M
- 質量 m = 物質量 n × モル質量 M
- 粒子数 N = 物質量 n × 6.02214076 × 10²³
例題5:水9.00 gに含まれる分子の数
- 物質量:9.00 g ÷ 18.015 g/mol ≈ 0.4996 mol
- 分子数:0.4996 × 6.02214076 × 10²³ ≈ 3.01 × 10²³ 個
小さじ2杯ほどの水9 gに、約3 × 10²³個の分子が含まれています。
例題6:硫酸銅五水和物10.0 gに含まれる銅の質量
- 物質量:10.0 g ÷ 249.677 g/mol ≈ 0.04005 mol
- 化学式1単位に銅原子は1個なので、銅も0.04005 mol
- 銅の質量:0.04005 × 63.546 ≈ 2.55 g
先ほど求めた銅の質量パーセント(25.45%)を10.0 gに掛けても、同じ答えが得られます。
有効数字とよくある間違い
- 有効数字:最終的な答えは、測定値の精度(たとえば9.00 gなら3桁)に合わせて丸めます。途中の計算では桁を多めに残し、最後に1回だけ丸めましょう。
- 二原子分子:酸素ガスはOではなくO₂なので、モル質量は31.998 g/molです。H₂、N₂、Cl₂も同様です。
- かっこや結晶水の見落とし:Ca(OH)₂のHを1個と数えたり、水和物の結晶水を入れ忘れたりするのはよくあるミスです。
- 角かっこの原子量:テクネチウム[97]のような角かっこの値は天然の平均ではなく、最も安定な同位体の質量数です。試料の同位体がわかっている場合は、その同位体の質量を使います。
手計算のやり方を身につけておけば、計算機の答えが妥当かどうかも一目で判断できます。周期表で原子量を確かめながら、上の例題を自分でもう一度計算してみてください。